

[6月3日]メキシコVSクロアチア(新潟ビッグスワン)
AM08:24
東京発新潟行きの上越新幹線に乗る。
既に東京駅のホームにメキシコの民族衣装をまとったサポーターの一団が
太鼓や民族楽器を打ち鳴らし気勢を上げていた。
ボクの隣の席には中学生くらいのメキシコの男の子。
おいおい学校はどうするんだ・・・
なんて聞いてはいけないな。
車内は陽気なメキシカンの笑い声があちこちで弾ける。
トイレタイムに隣の車両を通ったら、まるまる一車両メキシカンに
占拠されていてちょっと圧倒された。
越後湯沢を過ぎると車内はW杯目当ての客ばかりになる。
航空会社のパサーのようなユニフォームを着た女性が
新潟駅からスタジアムへのアクセス案内のパンフレットを
配って回っていた。このあたりの気配りはこの日一日を通して、
良くできているな、と感じた。
AM11:25
新発田着
新潟から白新線に乗り継いで新発田へ。
週末に先発してカミサンの実家に待機していた
家族をここでピックアップ。
気楽な一人旅はここでおしまい。
小学生2人、幼稚園児1人、大人2人、計5人の移動になる。
おいおい子供の学校はどうなるんだ・・・
なんて聞いてはいけない。これは立派な社会勉強だ。
おいおい5人で新潟まで観戦旅行なんてお金はどうしたんだ・・・・
なんて聞いてはいけない。
このところの不景気で我が家の家計は火の車だが、
いざ一家離散の事態になったら、これは貴重な思い出旅行になるではないか。
というと、ほとんどの人は苦笑いしながらも納得してくれた。
PM00:30
新発田から新潟へUターン、新潟駅からシャトルバスでスタジアムへ到着。
ここまでのアクセスの流れるような誘導は見事。
スタジアムの前にお祭り広場のようなスペースが用意され
サポーターが続々と詰めかけ盛り上がっている。
しかしクロアチアサポーターの影が薄いなあ。
不思議なことにクロアチアのユニフォームを着た
日本人サポーターを多く見かける。
前回大会で対戦したことで親しみがあるのか・・・・
ボクも赤と白のチェックのデザインのユニフォームは大好きだが。
いやあ、盛り上がってきたなあ・・・
と、 ゲートをくぐったとたんに事態は暗転。
PM01:00
「パパ、紙袋は?」
え!そ、そういえば・・・
家族で移動すると、こういう事態が必ず起こる。
うろちょるするクソガキに気を取られて落とし物忘れ物がないことがない。
金目のものはないけれど、2番目の娘のウェストポーチと着替えが入っている。
ウェストポーチには娘のお宝のシールのファイルがはいっているんだとさ!
ママの叱責を受けて、「パパって頼りないんだから!」娘の軽蔑の視線。
うっすらとした記憶を頼りにシャトルバスの発着所まで300M程戻って
忘れ物がないか聞くが、あるわけないって・・・
とりあえず連絡先の携帯の番号だけ記入してゲートに戻ると
今度はママと3番目の子がいない。
急にトイレに行きたいと言い出して目の前の100M位人が並んでいる簡易トイレに向かったとのこと。
結局スタジアムを目の前にして30分くらいゲートの脇で足止めをくらっちまった。
PM01:30
念願のスタジアム。
バックスタンドの2階、前から6番目と、かなり恵まれた座席。
チケットを手配してくれたカミサンの弟・Mちゃんに感謝!
試合開始2時間前で6割方入っている。メキシコのサポーターが圧倒的に多い。
新装の新潟スタジアム(ビッグスワン)は外観もスタジアム内も美しい。
大きく張り出した屋根がピッチを覆っているため、音が外に逃げることなくワンワンと響く。
ドルビーサウンドが轟く映画館のようだ。
但し、このサウンドに包まれてFIFAの流麗なイメージビデオを観ていると、延々とNIKEのコマーシャルを観せられているような気分になる。
せっかく世界からサポーターが来て民族色豊かな音を出して応援しているんだから、そちらもじっくりと聞きたいもんだ。
と、その時。カミサンの子供を叱責する声。
今度は声がひっくり返っている。
さんざん並んで買った飲み物のコップを子供が倒してしまい、前2列の座席下がお茶だらけ・・・・
ヒエー、触らぬカミに祟りなし。
さりげなく席を立ち、ボクはスタジアム散策の旅へ・・・・
PM03:30
試合開始。
あれ、瞼が落ちてくる、眠い・・・
これだけ大枚はたいて来たのに・・・試合に集中できない。
今日ここまでの出来事が走馬燈のように頭の中を現れては消える。
そらそうだ、日差しの強い中、2時間も待っていたんだ。
緊張のゆるみと共に疲れもでるわな。
それとこの2チームには魅力的なアタッカーがいない。
スーケル、ボクシッチは峠を過ぎているし、司令塔ボバンが引退したクロアチアは前回3位のブランド力だけが頼りだろう。
メキシコもダークホースではあるが、どちらかというと地味目。
一進一退の守備的な攻防のまま、前半終了。
眠い・・・・
後半、相次いでスーケル、ボクシッチOUT。
やはりベテランにはこの暑さがこたえるのだろう。
代わりに入ってきたのがラパイッチ。
え?ラパイッチ!
ラパイッチといえば中田がペルージャ在籍時、左サイドの突貫小僧として活躍していたのを覚えている。
中田のパスの良き受け手であり、決定力もあったが、玉離れが悪く中田も手こずったはず。
その気かんきな顔つきは今も変わらない。
クロアチアの左サイドはバックスタンド側なので、ボクの目の前を駆け上がる姿にペルージャ時代の彼を重ね合わすことができた。
知ってる人が出てくると、試合にすんなり入ることができる。
ここから試合も動き始めた。
但し、勝利の女神はメキシコにほほえんだ。
ラパイッチINの数分後、PKを取られた上、一人退場。
ラパイッチは前線を走り回り、前に上がって来るよう後方の選手に手を振るが、
皆一度頭を下げそれから思い直したように走り出す。
明らかにスタミナ切れだ。
勝利を確信した、メキシコサポーターはパスのたびに
「オレー、オレー」と楽しそうに叫ぶ。
終盤
クロアチアも最後の力を振り絞って攻撃。
ボクは点が入って引き分けになる予感がしていた。
メキシコサイドも肝を冷やしたシーンが何度かあった。
日も傾き、スタジアムの影が鋭角的に落ちるピッチ上に、
抜き身の真剣勝負が繰りひろげられた。
たった数分だったけど、
「これがワールドカップだ」といえるものを観た。
PM05:30
1-0メキシコ勝利、試合終了。
意気揚々と引き上げるメキシコサポーターに挟まれスタジアムを後に。
クロアチアはピッチ上でもピッチ外でも元気がなかったなあ。
そして、ふと携帯を観ると、着信件数4件。
忘れ物係から連絡が入っていた。
娘のお宝は出てきたんです・・・・
あー、良かった良かった。
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