連載-1

 


博多湾の糸島半島側から見た志賀島


編集者、コピーライターとして、東京で幅広く活躍されていた北根さんは、5年前、九州は糸島に移住。現在、NHK福岡ラジオの番組制作に関わり、「おはよう九州・沖縄」という番組で糸島地域の話題提供者として出演されています。番組取材で出会った人、ローカルな話題を当サイトで紹介してもらうことにしました。 ところで、北根さんは1926年生まれということは、七十ン歳・・・・当サイト関係者最長老ですね。世代を越えて、地域を超えて、インターネットならではのお話を期待しています。でも北根さん、夏までとはいわず、早くパソコン買ってくださいね。



 神戸という都市を直撃した大地震と東京という大都市を襲った不気味な地下鉄サリン事件の直後、1995年の4月、東京をエィッとばかりに脱出して、九州の糸島に移住。友人や親戚 も全くいないこの土地に魅せられてしまったわけを、まずは話しておこう。
 
の土地とは、福岡市の西隣から佐賀県に接するあたり。乾燥した晴れた日には壱岐はもちろん対馬まで見渡せる糸島半島。その根幹部には、中国の歴史書「魏志倭心伝」の記録から推定されている「伊都国」のあったところ。紀元前2世紀・弥生中期に繁栄し、紀元3世紀ごろまでは存続していたらしい。ちなみに漢委奴国王(かんのわのなこくおう)の金印が光武帝から下賜されたのは57年。その金印が発見された志賀島(しかのしま)の見えるビーチのレストランでフランスやイタリアのワインを楽しむことができるのは最高。
 福岡空港から地下鉄で福岡市を潜り抜けて、30分弱で姪浜(めいのはま)に着く。代々木上原駅から海が見えると思えばよい。そのまま軽快な地下鉄の電車('82ローレル賞)で西へ長垂山(ながたれやま)のトンネルを抜けると海辺に出る。そこから伊都国になる。空港からここまでおよそ35分。右手に見える糸島半島の北端に近いところに遣唐使ゆかりの唐泊(からどまり)港が見える。最初の駅が今宿(いまじゅく)、続いて周船寺(すせんじ)駅。主船司に由来するわけだが、朝鮮半島、中国、あるいは南方?からくる外国船とのさまざまな業務を処理する役所があったところ。ここ以外に糸島半島沿岸の今も健在な港がいくつもあるが、それらの港は江戸後期に伊万里焼、有田焼を日本全国に有名にした五ケ浦廻船の港。現在は漁港として大いに賑わっている。  
 
が家はこの周船寺駅から車で2、3分のところ。左手の山裾一帯に繁栄した古代伊都国の中心部を流れている瑞梅寺(ずいばいじ)川のほとりにある。魚がたくさん泳いでいて白驚の餌場になっているらしい。河口は渡り鳥の中継点として有名で、生きている化石といわれるカブトガニの産卵地としても有名。少年時代以来見ることのなかったオニヤンマ、ギンヤンマ、オハグロトンボ、無数のアカトンボに再会することができた。  
  周
船寺駅から二つ目の筑前前原(ちくぜんまえばる)駅、ここが現在の糸島地域の中心で、さらに西へ美しい海岸線を18kmドライブすると古代末盧国との国境にさしかかる。電車だと鹿家(しかか)トンネルあたりが伊都国の西端になる。前原から姪浜までの区間の複線化も最近完成した。長垂山トンネルから鹿家トンネルまでの東西およそ30km、糸島半島の北端から背振山(せぶりさん)・雷山(らいざん)山系に至る南北およそ20kmの地域はまとまった一つの自然環境であり、文化圏である。古代に伊都国が形成されたことは、ここに住んでみて、実感させられる。豊かな自然環境には古代そのままの景観が残っている。前原を中心に前方後円墳が50基以上も点在し、直径46.5cmの八咫鏡(やたのかがみ)5枚など多くの貴重な副葬品を出土した女王の墳墓が発掘されている。その他、中近東製の鮮やかなコバルトブルーのファイアンス玉 も発掘されている。  
 天守閣のような民家の重厚なカーヴをもったむくり屋根が東に移るに従って洗練された形となり京都の屋根のカーヴになる。太い石の鳥居もそれと同じく東へ行くほどスリムになっていく。京都、東京に住み、ここに住んで気づいたことだ。邪馬台国が九州だ、大和だというよりは、西から東への文明・文化の東漸説が自然ではないだろうか。  
  古
代伊都国が古代日本文化の発進地であり、その国際的な色合いは、江戸末期から明治維新にかけての横浜の役割を思わせる。粗末にしてはいけない。粗末にここで暮らしてはいけない。伊都文化圏としての重要性を再発見し、未来に生かさなければならない。



西日本夕日ベスト10に選ばれた糸島半島西海岸


KITANE.Hajime
北根 肇 コピーライター、エッセイスト
1926年4月25日生
〒819-1102 福岡県前原市高田297-9   TEL:092(324)7297 FAX:092(324)1182
●日本美学会、民族芸術学会、日本旅行作家協会会員
●京都大学文学部哲学科美学美術史専攻卒。
●専門分野:美術、デザイン(建築一般・キリスト教の教会建築・家具インテリア・商品一般 )、鉄道、香水、自然環境・都市空間の景観、文化的所産の民族的・歴史的背景。
●得意エリア:日本(とくに古代伊都国)とヨーロッパ。
●著書:『現代芸術七つの提言』共著『世界の香水』『ルイ・ヴィトン独創への共感』の編集ほか海外取材記事多数。
●趣味:旅行、鉄道模型(0ゲージ)、鯉の飼育、現在市販されていないもののコレクション(蓄音機、SPレコード、手動計算機、蛇腹式カメラなど)。

 

伊都国通信の著作権は全て北根氏に属します。

伊都国通信は隔月掲載の予定です。
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