博多湾の糸島半島側から見た志賀島

連載6 
九州大学移転用地の気になる
埋蔵文化財発掘調査
 

 州大学は、演習林や農場、付属病院は別 として、キャンパスが箱崎、筑紫、六本松にと点在している。それらをまとめて、ただし病院・医学部を除いて2005年(平成17年)か ら2014年(平成26年)にかけて工学部、文学部、農学部などを糸島半島のほぼ中央 部275ヘクタールの敷地に大移動して一大学園都市づくりの準備が始まっている。その場所は福岡市西区と志摩町の前原市に接するあたりの丘陵地帯。

九大が移転してくる丘陵地帯
近くに地ビールの醸造元で、しかも、
その場で飲める所が2か所もある。


 この地域は古代に繁栄した伊都国の玄界灘に接するところだから、まさに宝探しの発掘調査ということになる。すでに1996年(平成8年)から発掘調査が始まっており、あと4、5年発掘調査が続けられる(現在、その発掘調査10年のほぼ中間時点になる)。九大の全敷地面 積275ha÷福 岡ドーム6.9ha=39.9、福岡ドームのおよそ40倍の広さになる。およそ福岡空港ぐらい?の広さだろうか。  

現在までの発掘調査の結果は次の通り

前方後円墳・・・・・7基      
円墳・・・・・・・・68基      
中世墓地・・・・・・2か所      
中世山城遺構・・・・2か所      
一般遺跡・・・・・・31か所


●木簡 (もっかん)  
20前後の木簡が発掘されているが、大宝元年(AD701) という年号が明記されている。 発掘の現場に展示されていたその木簡をこの目で見る機会を得ていたく感動した。

大宝元年の木簡が発掘された所
正面の山裾で多くの木簡のほか秤のおもり、糸車なども発掘された。



日本の歴史の最初の年号が明記された木簡として最古(文武天皇の大宝律令制定の年)。これまでに木簡は全日本でおよそ10万本発掘されているが、年号明記最古の木簡はこれが唯一。
しかも、発掘された場所が官営の倉庫もしくは役所跡であったから、奈良の朝廷との密接な関連が推定され、当時の日本でかなり格式のあった政治的拠点であり、当時の日本の先進的役割を果 たしていたと推定される。それはまた中央政権の律令体制が遠隔の地方にまで達していた証拠でもある。


●製鉄炉跡が多いこと  
製鉄炉が多数集まっているところが、およそ5か所あり、それぞれ倉庫か役所のような 建物の跡がある。官営の製鉄炉らしく、石ケ元古墳群では27基の製鉄炉と鉄滓が50トンも発掘されている。鉄滓(てっさい)とは製鉄の時に出来る泡状の鉄のカス(8世紀初期) 。

護岸工事の済んだ平川池
この近くだけで27基の製鉄炉と鉄滓50トンが発掘された。



 これ以前の日本全体が青銅器時代だったころに、すでに製鉄技術が朝鮮半島から伝えられていたとも考えられているようだ。そういう意味では、古代日本の先進的な製鉄の拠点だったのかもしれない。北九州で製鉄が栄えたルーツを見たような気がした。と夢想していたら、発掘調査担当の菅波氏が「ここからすぐ近くの博多湾に面 した大原おおばる海岸の砂浜には良質の砂鉄があるので、戦前には、その砂鉄を八幡に運んでいたらしいですよ」という。合点!

 

<写真左>大原おおばる海岸
良質の砂鉄が採れた砂浜。松林の中に元寇防塁が残っている。
<写真右>大原海岸の砂紋が黒ずんで見えるのは・・・?



 さまざまな遺跡を最終的にどれをどのようにキャンパスに保存するかが、重要な課題になっているようだが、大いに期待したい。
キャンパスの整地、造成も発掘調査の済んだところから慎重に進められているようだ。

 


※今回の伊都国通信の参考文献としてお勧めしたいものをご紹介しておく。  
武野要子著:博多−町人が育てた国際都市− 岩波新書  
人物往来社発行:歴史読本2月号(2001年)

KITANE.Hajime
北根 肇 コピーライター、エッセイスト
1926年4月25日生
〒819-1102 福岡県前原市高田297-9   TEL:092(324)7297 FAX:092(324)1182
●日本美学会、民族芸術学会、日本旅行作家協会会員
●京都大学文学部哲学科美学美術史専攻卒。
●専門分野:美術、デザイン(建築一般・キリスト教の教会建築・家具インテリア・商品一般 )、鉄道、香水、自然環境・都市空間の景観、文化的所産の民族的・歴史的背景。
●得意エリア:日本(とくに古代伊都国)とヨーロッパ。
●著書:『現代芸術七つの提言』共著『世界の香水』『ルイ・ヴィトン独創への共感』の編集ほか海外取材記事多数。
●趣味:旅行、鉄道模型(0ゲージ)、鯉の飼育、現在市販されていないもののコレクション(蓄音機、SPレコード、手動計算機、蛇腹式カメラなど)。

 
伊都国通信の著作権は全て北根氏に属します。

伊都国通信は隔月掲載の予定です。
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