[渋谷夜話] Vol.20・・・・ホセ・ササモート

深ーい、深ーいカリプソの
世界に迷い込んだ話 
その1

 




GOLDEN YEARS OF CALYPSO
MVCE-24077
 

 16話で「バナナボート」の歌詞が分からないという話を書いたのだが、分かりました。
皆様、本当にご心配をおかけしました。
NHKの衛星放送で伊東ゆかりや九重ゆみ子なんかが懐かしのポップスを歌う番組を見ていたら、「バナナボート」の歌詞が英語の字幕で流れたのだ。
「コンミスタタリマンタリミバナーナ」はCome, Mr. Tallyman, tally me banana であった。
「テライコマンミワンゴーホー」はDaylight come an' me wanna go homeであった。
Tallymanというのは検数係、tally は数を検査することだから、この歌詞は荷役の人夫が「検数係さんよ、オレが運んだバナナを数えてくれよ。日が出たから、家に帰りたいんだ」といっているわけだな。いや、疑問が氷解してよかった。

「バナナボート」といえばカリプソの代表曲ということになっているのだけど、ちょうどいい機会だから他の曲も聞いてみようと思って、中村とうよう監修・選曲の " GOLDEN YEARS OF CALYPSO " というCDを聞いてみた。
そしたら、驚くべきことが分かった。
私はカリプソというのはカリブ諸島で生まれたリズムの一種かと思っていたのだが(そう思っている人は多いと思う)、全然違っていて、なんとトリニダード島(カリブ諸島の一番はしっこ。
ほとんどベネズエラにくっていている)限定の民族音楽だったのだよ、諸君。
中村の解説を引こう。
カリプソというのは「歌詞の内容に重点を置いた、いわばメッセージ・ソングで、本来は歌の作者が自分で歌うべきものであり、声の美しさとか歌唱力よりも、ウィットの効いた歌詞を作りそれを効果的に表現するとこで評価される」のだそうだ。
中村は「ブルースとも共通する」と書いているが、これはシャンソンとも共通する。吟遊詩人の世界だ。
聞いてみると、極めて興味深い。
このCDには1931〜45年録音の4 人のカリプソニアンが入っているのだけど(みんな男性)、確かに歌唱力で聞かせるというものではないな。
なんだか、そのへんのオッサンがカラオケを歌っているみたいだ。メロディーは軽くて陽気。
歌の内容は(イギリスの植民地だったから歌詞は英語。解説書に載っているから分かるので、聞いただけではさっぱり分からない)男と女の話とか、火事やストライキのような出来事とかいろいろだけど、ユーモラスな調子は一貫している。
私は河内音頭とか、植木等の「スーダラ節」なんかを連想した。

 




 

 

 



CALYPSO AFTER MIDNIGHT!
ROUNDER11661-1841-2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 の解説は深沢美樹という人(日本のカリプソ研究の第一人者だそうで、たいへん勉強になる解説) が書いているのだが、その中にもう一つ驚くべき事実を発見した。
キング・レイディオというカリプソニアンについて、「他に『ブラウン・スキン・ギャル』も大ヒットした」と書かれているのである。
これって、ロリンズの" WHAT'S NEW "に入っている" BROWNSKIN GIRL "でしょう。
GAL でもGIRLでも同じだものね。
早速タワーレコードに行って、この曲が入っているカリプソのアルバムを探したのだが、なかった。
その代わり、またまた驚くべき発見をした。
なんと" DON'T STOP THE CARNIVAL " が入っているアルバム(" CALYPSO AFTER MIDNIGHT! ")があったのである。
あたふたと買い求め、家に帰って早速聞いてみると。
やっぱり" WHAT'S NEW "に入っている" DON'T STOP THE CARNIVAL " と同じ曲であった。
作曲者はルパート・グラントとなっている。
すると、この2 曲はロリンズのオリジナルではなく、カリプソの大ヒット曲なのだ。
じゃあ、なんで日本版 " WHAT'S NEW "では2 曲とも作曲者がロリンズになっているんだ? 不思議だ。

 も、おかげでこのアルバムの原盤のライナーノーツにアバキアンが書いている「カリプソ音楽」の意味がわかった(第17話参照)。
ここでいう" calypso music " とはジャンルのことではなくて、この2つのヒット曲のことなのだ。
両方とも30年代、40年代の曲だろうから、1930年生まれのロリンズは、子供の頃から親しんでいたに違いない。
きっと、大好きな曲を自分でもやってみたかったのだろう。その気持ちが、あの楽しい演奏の源泉なのだ。
これら 2枚のアルバムで出会ったカリプソについては、パーカッションのこととか、黒人差別に対する抗議のメッセージ(そういう歌がある)のこととか、いろいろ書きたいことがあるのだが、例によってもう紙面がない。またの機会といたしましょう。

 


写真はいずれもアルバムジャケットより

 

   
   
(ノーチェ短信) What's new with Noche?
11月24日、吉祥寺伊勢丹のクリスマスツリー点灯式のイベントに、今年も出演することになりました。またすごく寒いんだろーなー。まあ、熱い演奏で寒さを吹っ飛ばすしかないか。新曲、4 拍子版の" TAKE FIVE " は間に合いそうもないし、さてなにが目玉になるかは、当日のお楽しみ。
Oct. 03
   
   
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text &資料提供/JoseSasamoto
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